エルダー・レイ:ブルパワー、ベアパワーと移動平均線の傾き
エルダー・レイ(Elder Ray、Elder-ray 指数とも呼ばれます)は、二本のヒストグラムを並べて表示します。ブルパワー(Bull Power)は各足の高値が指数移動平均をどれだけ上回ったか、ベアパワー(Bear Power)は安値がその線をどれだけ下回ったかです。アレキサンダー・エルダー(Alexander Elder)は、この二本を同じ移動平均線の向きと一緒に読むよう設計しました。トレンドがどちら側で取引するかを決め、ヒストグラムがいつ仕掛けるかを決めます。このページでは、計算方法を言葉で説明し、移動平均の期間の選び方、もっとも問題を起こしやすい二つの誤読、そしてストラテジージェネレーターがあなた自身の銘柄でブルズパワーとベアーズパワーを検証するときに調整できる項目を紹介します。
何を測るのか
エルダー・レイは、アレキサンダー・エルダーが各足の背後にある二つの陣営を切り分けるために考えた手法です。彼は九〇年代初めの著書『Trading for a Living』でこれを紹介し、終値の指数移動平均を市場の価値に関するコンセンサス、つまり買い手と売り手が最近おおむね合意している価格とみなしました。足の高値は、その足の中で買い手が価格をどこまで押し上げられたかを示し、安値は売り手がどこまで押し下げられたかを示します。この両端をコンセンサスの線と比べると、一本の足につき二つの値が得られます。これが考え方の核心です。買い圧力と売り圧力を一本のオシレーターにまとめるのではなく、分けたまま示すので、どちらの側が市場を価値から引き離し、どちらの側が後退しているのかが見えます。
計算は三段階です。まず、選んだ期間で終値の指数移動平均を求めます。次に、その足の高値から移動平均を引きます。これがブルパワーで、高値が移動平均より上に届けばプラス、高値でさえ下にとどまればマイナスになります。最後に、安値から同じ移動平均を引きます。これがベアパワーで、安値が移動平均を割り込めばマイナス、安値でさえ上に保たれればプラスになります。どちらも通常はゼロラインを中心とするヒストグラムで描かれます。高値が同じ足の安値を下回ることはないため、ブルパワーは同じ足のベアパワーより常に大きいか等しく、両者の差はちょうどその足の値幅になります。大きな足は二つの値を引き離し、小さな足は近づけます。そしてゼロラインに対する二つの位置が、その足が価値より上で取引されたのか下で取引されたのかを教えてくれます。
この幾何学的な関係が値に意味を与えます。健全な上昇トレンドでは、ブルパワーはプラスを保ち、ベアパワーはほとんどの時間ゼロラインのわずかに下にあります。力強い上昇で安値まで移動平均の上に持ち上がると、ベアパワーはプラスに転じ、売り手が価値にまったく届いていないことを示します。下降トレンドでは逆になり、ベアパワーはマイナスが続き、ブルパワーがマイナスになれば買い手は高値を移動平均まで戻すことさえできていないということです。どちらの値も銘柄自身の価格ポイントで表されます。エルダーのもう一つの有名なツールである エルダー・フォース・インデックス と混同されがちですが、こちらは終値から終値への変化を出来高で重み付けするもので、高値と安値を移動平均と比べるものではありません。作者もゼロラインも同じですが、答えている問いは違います。
実際の相場での振る舞い
エルダー自身のルールは、ヒストグラムではなく移動平均から始まります。指数移動平均の傾きが方向を決めます。上向きのあいだは買いのセットアップだけを考え、見るべきはベアパワーです。下向きのあいだは売りだけを考え、見るべきはブルパワーです。代表的な買いのセットアップは、ベアパワーがゼロラインの下にありながら上昇し始める形で、価格が価値の下まで押したものの、売り手の押し下げる力が縮んでいることを意味します。対になる売りのセットアップは、下降トレンド中にブルパワーがゼロラインの上にありながら下がり始める形で、価値の上に顔を出した戻りの勢いが衰えている状態です。エルダーはダイバージェンスを特に重視しました。上昇トレンドで価格が安値を更新したのに、ベアパワーの谷が前回より浅ければ、売り手の疲れを示唆します。彼はこの二本を増し玉にも使いました。たとえばベアパワーがゼロラインを割ってから再びゼロラインの上に戻ったときに買いポジションを積み増すといった使い方です。Elder-ray は、長い時間軸で先に方向を決める彼のトリプルスクリーン(Triple Screen)の一部として紹介されることが多いものの、単独の手法としても使えます。
主な設定は指数移動平均の期間で、トレンドフィルターと二本のヒストグラムを同時に動かします。短い移動平均は価格にぴったり寄り添うため、高値と安値はあまり離れません。値は小さく、符号が頻繁に入れ替わり、傾きもすぐに向きを変えます。動きの速い日中のタイミング取りには向きますが、だましの転換も増えます。長い移動平均は遅れが大きくなるため、値は大きくなり、続く値動きの中でゼロラインの片側に長くとどまり、傾きはより安定した、ただし反応の遅いフィルターになります。エルダーの元のデフォルトは、日足でのかなり短い移動平均でした。先物の日中足では、実際に取引する波動をカバーする期間を選び、本の数字に合わせるのではなく、あなた自身の銘柄でその傾きがトレンド局面とレンジ局面をどれだけきれいに分けるかで判断してください。ヒストグラムと比べる水準も同様に、銘柄の現在のボラティリティに見合ったポイント数で決めるべきです。
二つの誤用が繰り返し見られます。一つ目は、トレンドフィルターなしで片方のヒストグラムだけを使うことです。上昇相場ではほとんどの足でブルパワーがプラスになり、レンジの中でも多くの足でプラスになります。そのため「ブルパワーがゼロラインを上抜けたら買う」というルールは、高値が移動平均を少し越えるたびに買うのと同じで、横ばいの相場ではそれが絶えず起こります。同様に、深いマイナスのベアパワーは強い売りに見えますが、上昇トレンドの中では、まさにエルダーが買いたかった押し目です。ヒストグラムが表すのは価格が価値からどれだけ離れたかであり、そのうちどれが好機で、どれが様子見の合図なのかを教えてくれるのは移動平均の傾きだけです。二つ目の誤用は、生の値を銘柄間で比べることです。どちらの値も価格ポイントなので、数万ポイントで取引される株価指数先物のブルパワーは、債券先物や通貨先物の値をはるかに上回ります。同じ銘柄でも価格水準が上がった後は値が大きくなります。あるチャートから別のチャートへ、あるいは過去の初期から現在へとそのまま写したしきい値は、場所ごとに意味が変わります。比べる前に、銘柄自身の最近の値幅や ATR と照らし合わせてください。
代表的な使い方(考え方)
上昇トレンドでゼロラインの下から上向くベアパワー
移動平均が上向きのとき、ゼロラインの下にあるベアパワーが上向きに転じれば、価格が価値の下まで押したものの売りの届く範囲が縮んでいることを示します。これがエルダーの中心的な買いのセットアップで、移動平均が下向きのときにゼロラインの上でブルパワーが下向きに転じる形が、対になる売りです。
安値更新で谷が浅くなる
価格が安値を切り下げたのに、ベアパワーの谷が前回の安値のときより浅い場合、売り手が二回目に価値の下へ押し込めた距離は短くなっています。上向きか横ばいの移動平均と合わせて読めば下落の勢いが弱まっていることを示唆しますが、それだけで転換を示すわけではありません。
安値まで価値の上にとどまるとき
ベアパワーがプラスということは、足全体が移動平均の上で取引されたということです。そうした足が続く場合、売り手が価値まで押し戻せない相場を表しており、ポジションを長めに持つ、あるいは流れに逆らわないための目安にするトレーダーもいます。
ほかの系統のインジケーターとの組み合わせ
エルダーが想定していた相棒は、移動平均そのものです。同じ種類・同じ期間の 移動平均線 が傾きを提供し、ヒストグラムを生の値から取引できるセットアップへと変えます。ルールベースのストラテジーでは、この二つは通常別々の条件として書かれます。一方の条件で移動平均が上昇中か下降中かを確かめ、ブルパワーまたはベアパワーがその方向の中でタイミングを決めます。両方に同じ期間を使えば、同じコンセンサスの線を描写し続けられます。
MACD はよい比較対象です。そのヒストグラムは終値から作った一本の系列にすべてのモメンタムをまとめますが、エルダー・レイは買い手と売り手を分け、各足の両端を使います。MACD のヒストグラムがまだ上昇しているのにブルパワーの山が低くなっていれば、終値ベースでは上昇が続いていても、高値が価値の上に届く距離は短くなっています。これは一本の系列では見えない細部です。
スケールの問題には、ATR がもっとも簡単な相棒です。ATR も同じくポイントで測るので、ブルパワーやベアパワーを現在の平均的な値幅に対する比率で表せば、年をまたいでも銘柄をまたいでも値を比べられます。ADX のようなトレンドの強さの指標も、移動平均の傾きを信頼してよいかの判断に役立ちます。動きの乏しい相場でわずかに上向いた移動平均は、方向についてほとんど何も語らないからです。
AlphaPrimeでの扱い
AlphaPrime では、エルダー・レイはストラテジージェネレーターの二つの内蔵グループ、ブルズパワーとベアーズパワーとして表示されます。そのため、ストラテジーはどちらか一方のヒストグラムだけでも、両方を一緒にでも使えます。各グループには指標の計算期間である「指標期間 N」があり、水準とクロスの条件には、値を比べる水準である「しきい値」も加わります。しきい値をゼロに置けば、エルダーのルールにある単純な価値より上・価値より下の読み方になり、ゼロから離せば、値がより遠くまで届いたときにだけ条件が成立します。「現在足のシフト」を使うと、条件が最新の足ではなく前の足を読むようにできます。
二つのグループは同じ条件のセットを備えています。ブルズパワーには「ブルパワー レベルを上抜け」「ブルパワー レベルより上」「ブルパワー 上昇中」「ブルパワー 上向きに転換」があり、それぞれ下方向の対があります。ベアーズパワーにも対応するセットがあり、たとえば「ベアパワー レベルより下」や「ベアパワー 上向きに転換」です。エルダーの押し目のセットアップは、これらの言葉にそのまま対応します。しきい値をゼロにした「ベアパワー レベルより下」に「ベアパワー 上向きに転換」を組み合わせる形です。この二つのグループは高値と安値がどれだけ届いたかを測りますが、移動平均の傾きはあなたに任されています。移動平均グループから「移動平均 上昇中」または「移動平均 下降中」を加えれば、エルダーが重視したトレンドフィルターを補えます。
ジェネレーターはこれらの条件を他のファミリーのルールと掛け合わせ、候補を GPU で並列にバックテストします。アウトオブサンプル検証のしきい値を設定できるので、ある一時期の履歴やある価格水準にしか合わなかったヒストグラムのルールは、先へ進む前に脇へ置けます。残ったストラテジーは取引プラットフォーム向けの PowerLanguage ストラテジーコードとしてエクスポートでき、エルダー・レイの各条件を一行ずつ読んでからシミュレーションに進めます。
よくある質問
ブルパワーやベアパワーは単独で使えますか?
使えますが、本来そのようには設計されていません。エルダーは二本のヒストグラムを同じ指数移動平均の傾きと一緒に読みました。傾きが側を選び、ヒストグラムがタイミングを選びます。このフィルターがないと、ゼロラインのクロスはほとんどの場合、足が移動平均に触れたことを示すだけで、レンジではそれが絶えず起こります。上昇中または下降中の 移動平均線 の条件と組み合わせるのが一般的な対処です。
エルダー・レイの期間はいくつに設定すればいいですか?
誰にでも合う設定はありません。短い移動平均は速く小さな値と神経質な傾きを、長い移動平均は大きく安定した値と遅い転換をもたらします。エルダーのデフォルトは日足から来ているので、先物の日中足では、あなたの銘柄でトレンドとレンジを分けられるのはどの期間かが本当の問いであり、バックテストがそれに答えてくれます。
エルダー・レイのダイバージェンスは信頼できますか?
価格とベアパワーまたはブルパワーのずれは、一方の側が以前ほど価値の外へ届いていないことを示すもので、それ自体が反転のタイミングを示すわけではありません。エルダーはこれを移動平均の傾きの方向にだけ使いました。背景情報として扱い、あなた自身の銘柄で、転換が続かずに現れる頻度も含めて検証してください。

