DMI(方向性指数):+DI・−DI と両線のクロス
方向性指数(DMI)は +DI と −DI の二本の線を描き、最近の値動きのうちどれだけが上へ、どれだけが下へ伸びているかを示します。トレーダーが見るのは、どちらの線が上にあるか、そして二本がどこで交差するかです。このページはその二本の線とクロスに絞って解説します。どう計算されるのか、なぜクロスはトレンド成立の証拠ではなく主導権の交代なのか、そしてストラテジー生成ツールがあなた自身の銘柄でクロスのルールをどう検証できるのか。トレンドの強さそのものは ADX のページで扱っています。
何を測るのか
方向性指数(Directional Movement Index、略して DMI)は、価格の上方向への伸びと下方向への伸びを比べる二本一組の線です。プラス方向線 +DI は足が前の高値を超え続けると上昇し、マイナス方向線 −DI は足が前の安値を割り込み続けると上昇します。方向性の概念は J. Welles Wilder が七〇年代後半に出版した著書『New Concepts in Technical Trading Systems』で紹介したもので、同じ本で パラボリック SAR や平均トゥルーレンジもトレーダーに知られるようになりました。ADX はこの二本の線から後で組み立てられるため、三本が一緒に描かれることがよくあります。
計算を言葉で説明すると、一本ずつ足を追って進みます。まず、当日の高値が前の足の高値をどれだけ上回ったか、当日の安値が前の足の安値をどれだけ下回ったかを測ります。二つのうち大きい方だけを残し、しかもプラスの場合に限ります。もう一方はその足ではゼロとして記録します。前の高値も前の安値も超えないはらみ足は、どちらの側にも何も加えません。次に、上方向と下方向の伸びをそれぞれ Wilder 独自のゆるやかな平均の方法で計算期間にわたって平滑化し、同じ期間で平滑化したトゥルーレンジで割ります。どちらの側もトゥルーレンジに対する割合で表すことで、価格水準やティック価値が大きく異なる銘柄同士でも線を比較できるようになります。
二本とも同じトゥルーレンジを基準にしているため、表しているのは価格ではなく比率です。+DI が −DI より上にあれば、最近の足は下よりも上へ多く伸びています。二本の位置が入れ替われば、主導権が交代したということです。二本の間隔は最近の動きがどれだけ一方的だったかを示し、間隔が狭まれば優勢な側が勢いを失いつつあることを示します。この二本が教えてくれないのは、その主導権がどれだけ続くかであり、それこそ ADX が答えるために作られた問いです。
実際の相場での振る舞い
DMI で最もよく見られる誤用は、+DI/−DI のクロスをトレンドの確定として扱うことです。クロスが示すのは、計算期間の中で一方の伸びがもう一方をわずかに上回ったということだけです。大きな足が一本出ただけでも、寄り付きのギャップでも、あるいは優勢だった側が弱まり、もう一方がほとんど動かなかっただけでも起こり得ます。クロスの多くは、二本とも低い位置で接近している時に起こり、その状態ではどちらの側も本当には押していません。そうしたクロスをトレンドの始まりとみなし、トレンド向けのサイズで建玉すると、方向性の動きが最も弱い瞬間にポジションを取ることになりがちです。クロスは、まだ裏付けを必要とする主導権の交代として読む方が適切です。続く数本で二本の線が離れていくか、ADX が上昇するか、価格が重要な水準を抜けるか、といった裏付けです。
方向性の動きが弱い時、二本の線は互いに絡み合います。静かなレンジでは多くの足が隣の足と重なり、両側の伸びが小さくなり、平滑化された二本は近づいていき、小さな振れのたびにどちらかがわずかに前に出ます。その結果、向きが交互に入れ替わるクロスが続き、一つ一つが直前のクロスを打ち消します。反転のたびに売買するクロス型のシステムは、そのたびに少しずつ失っていきます。Wilder 自身はシグナルにストップを組み合わせていました。買いシグナルではシグナル足の安値を、売りシグナルではその足の高値を当初のストップとしました。その水準が守られている限り、二本の線が交差し直してもシグナルは有効とされ、手仕舞いを決めるのは再クロスのたびではなくストップでした。二本の線の間に最低限の間隔を求める、クロス後に数本の持続を待つ、別の相場環境判定を加える、といった方法がこうした反転を減らす一般的な手段です。
計算期間の選び方は、クロスがどれだけ早く現れるかと、どれだけ頻繁に現れるかのトレードオフです。期間を短くすると、二本とも最近の伸びに素早く反応し、クロスは早く出ますが、もみ合いの相場ではより頻繁に反転します。期間を長くすると線は滑らかになり、トレンド中は二本が長く離れたままになってダマシが減りますが、その代わりクロスは転換点からかなり遅れて現れます。一つの設定が二本の線を同時に動かすため、二本が普段どれだけ離れているかも変わります。したがって間隔のしきい値は計算期間と切り離さず、一緒に決める必要があります。足の時間軸も影響します。日中足では一度の寄り付きのギャップが平滑化の結果を左右することがあり、日足では二本の動きはより緩やかです。教科書の初期値をそのまま使うより、実際に取引する銘柄と時間軸でいくつかの計算期間を比べる方が多くのことがわかります。
代表的な使い方(考え方)
優勢な線の方向にだけ取引する
クロスそのものに反応するのではなく、状態を使います。+DI が −DI より上にある間だけ買いのルールを、−DI が優勢な間だけ売りのルールを許可します。こうすると DMI は、たとえば ドンチャンチャネル のブレイクアウトのような別のエントリーに対する方向フィルターになり、反転のたびに反応することがなくなります。
クロスの後に続伸を求める
クロスをシグナルではなく候補として扱います。新しく優勢になった線がさらに一、二本上昇を続けるか、価格がクロスした足の高値・安値を超えるまでエントリーを待ちます。すぐに反転したクロスは取引にならないため、前述のダマシの大部分を取り除けます。
優勢な線が下向きに転じたら手仕舞う
買いポジションの保有中は、完全なクロスを待たずに +DI を見ます。優勢な線が下向きに転じ、−DI が上昇し始めたら、上への勢いが失われつつあるので、ストップを引き締めることができます。そのストップ幅を ATR に合わせれば、現在の値幅に見合った水準に保てます。
ほかの系統のインジケーターとの組み合わせ
最も自然な組み合わせ相手は ADX です。同じ二本の線から計算されるからです。DMI はどちらが優勢かを示し、ADX はその優勢が持続しているかを示します。ADX が低い水準から上昇している時のクロスと、ADX が低く横ばいの時のクロスは別の出来事であり、両者を分けることが前述のクロスの問題への最も簡単な答えになります。
より遅い方向の基準を加えるのも有効です。移動平均線 の傾きで取引する側を決め、DMI はその方向でのエントリーのタイミングにだけ使い、傾きに逆らうクロスは無視します。アルーン は別の角度から確認を与えます。足がどれだけ伸びたかではなく、高値と安値がどれだけ最近付けられたかを見るからです。
ほぼ同じものを測るツールを DMI に重ねるのは避けましょう。ボルテックス指標 も連続する足の間の上方向と下方向の推進力を比べるため、そのクロスは DMI のクロスとしばしば重なり、新しい情報はほとんど加わりません。DMI をボラティリティ指標や価格水準のブレイクアウトと組み合わせれば、ルールはこだまではなく独立したもう一つの意見を得られます。
AlphaPrimeでの扱い
AlphaPrime では、DMI はストラテジー生成ツールに組み込まれた条件グループで、「方向性指数 DMI」として表示されます。調整できる入力は指標期間で、+DI と −DI を同時に動かす計算期間です。代表的な条件としては、主導権を表す「+DI が −DI より上」「+DI が −DI より下」、クロスを表す「+DI が −DI を上抜け」「+DI が −DI を下抜け」、そして片方の線の傾きだけを見る「+DI 上昇中」「−DI 下降中」「+DI 上向きに転換」などがあります。
これらの条件により、生成ツールはこのページで取り上げた問いを、答えを決めつけずに検証できます。クロスをエントリーに使う、主導状態を別のエントリーのフィルターに使う、優勢な線の転換をエグジットに使う、といった使い方を、それぞれ他のファミリーのルールと組み合わせます。GPU が候補を並列でバックテストします。アウトオブサンプル検証のしきい値を設定できるので、特定のトレンド局面でしか機能しなかった組み合わせではなく、まだ見たことのないデータでも通用する組み合わせだけを残せます。まさにそうした局面こそ、クロス型のルールが実力以上に良く見えやすいところです。
検証を通過した組み合わせは、取引プラットフォーム向けのストラテジーコードとしてエクスポートできます。DMI の条件はほかのエントリー・エグジットのルールと並んで省略なく書き出されるので、ロジックを読み、シミュレーションし、実際に取引するかどうかを判断できます。
よくある質問
DMI と ADX の違いは何ですか?
DMI は +DI と −DI という一組の方向線で、どちらの側がより大きく伸びてきたかを教えてくれます。ADX は二本の差を両者の合計に対する比率として導き、さらに平滑化したもので、方向は問わず優勢がどれだけ持続しているかを測ります。多くのトレーダーは DMI で方向を、ADX で強さを読みます。
+DI が −DI を上抜けたら、上昇トレンドが始まったということですか?
それだけでは言えません。計算期間の中で、上方向の伸びが下方向の伸びをちょうど上回ったということです。レンジ相場ではこれが何度も起こり、その後にトレンドが続かないこともよくあります。二本の線が離れるのを待つ、ADX の上昇を待つ、あるいは価格がクロスした足の高値を超えるのを待つことで、行動する前にクロスに十分な裏付けを与えられます。
DMI を使ったストラテジーは取引プラットフォームで動かせますか?
はい。DMI の条件で作られた組み合わせがアウトオブサンプル検証を通過すると、取引プラットフォーム向けのストラテジーコードとしてエクスポートされます。プラットフォーム上で条件を確認し、シミュレーションし、本番に移すかどうかを判断できます。

