マスインデックス(Mass Index):レンジ拡大とバルジのパターン
マスインデックス(Mass Index)は Donald Dorsey が考案した指標で、価格の方向ではなく、各バーの高値と安値の幅を見ます。その幅がいったん膨らみ、また落ち着くと、Dorsey が「反転バルジ(リバーサル・バルジ)」と呼んだ形が現れ、いまの値動きが終わりに近づいている可能性を示します。このページでは、計算の考え方、どちらに転じるかを教えてくれない理由、そしてストラテジージェネレーターがお手持ちの先物でどう検証できるかを説明します。
何を測るのか
マスインデックスは、ひとつの観察から生まれたボラティリティ指標です。トレンドが転換する前には、各バーの値幅がしばらく広がり、その後また狭まることがよくあります。Donald Dorsey は九十年代初めに『Technical Analysis of Stocks & Commodities』誌でこの指標を発表し、レンジのこうした膨らみを数値で捉えようとしました。終値や方向はまったく見ないため、大きな陰線も大きな陽線も同じ重さで数えられます。
計算を言葉で説明すると、四つの段階になります。まず、各バーのレンジ、つまり高値から安値までの距離を取ります。次に、そのレンジを指数移動平均(EMA)で一度平滑化します。さらに、同じ長さの二本目の EMA で結果をもう一度平滑化し、同じレンジのより遅い、二重に平滑化された版を作ります。最後に、一度平滑化したレンジを二重に平滑化したレンジで割り、その比率を合計期間にわたって足し合わせます。レンジが安定している間は二本の平均がほぼ重なり、各比率は一の近くにとどまるので、合計は期間の長さに近い水準で落ち着きます。レンジが広がり始めると速い平均が遅い平均を上回り、比率がそろって上がって合計も上昇し、レンジが縮むと普段の水準を下回ります。
この作りが、よく知られたボラティリティ指標との違いです。ATR はバーの大きさをポイントで示し、ストップの設定には役立ちますが、レンジが普段より速く変化しているかどうかは教えてくれません。ボリンジャーバンド は終値が平均の周りにどれだけ散らばっているかを測るため、バーの拡大だけでなく一方向への持続的な動きにも反応します。マスインデックスは大きさも散らばりも測りません。レンジの平均をその平滑版と比べるので、いわばレンジの変化率のような読み方になり、銘柄の価格水準や普段のボラティリティに関係なく、レンジが最近の平常値に比べて広がっているかを問います。
実際の相場での振る舞い
典型的な読み方は Dorsey のバルジのパターンです。Dorsey は、指数がまず高いしきい値を上抜けてレンジが平常を大きく超えて広がったことを示し、その後やや低いトリガー水準を下回るのを待ちました。シグナルは上昇ではなく下落の側にあり、レンジの拡大がピークを越えて落ち着き始めたときに初めてパターンが完成します。高い水準にとどまっているだけなら、市場はまだ拡大の途中で、パターンは出ていません。Dorsey の水準は標準的な合計期間を前提に決められたもので、多くの銘柄では高いしきい値にめったに届かないため、トレーダーはこれを下げたり、銘柄ごとの過去の推移と比べて判断したりします。
線の形を決める設定は二つあります。EMA の長さはレンジ平均の反応速度を決めます。短くすると比率の動きが荒くなってバルジが増え、その多くは小さなものになります。長くすると持続的な拡大にしか反応せず、転換の印は少なく、遅くなります。合計期間はどれだけの履歴を足し合わせるかを決めます。短い期間では指数の上下が速くなり、長い期間では線がなめらかになって普段の水準も高くなります。普段の水準が期間に左右されるため、ある期間に合うしきい値は別の期間には合いません。一枚のチャートがきれいに見えるまで調整するのではなく、異なる時期でも似た振る舞いを保つ設定を選ぶのが筋です。
最もよくある誤用は、バルジを方向のシグナルとして読むことです。完成したバルジが示すのは、値動きの性格が変わりつつあること、つまりレンジが膨らみ、いま落ち着いてきていることだけです。上昇の後に下げに転じるのか、下落の後に上げに転じるのかは示さず、反転そのものも約束しません。拡大が単なる小休止に変わり、元のトレンドが再開することもあるからです。チャートが底に見えるという理由でバルジのたびに買うのは、指標が与えていない方向を自分で付け足していることになります。方向は別のところから得る必要があり、通常はバルジの前のトレンドを使います。下落の後に完成したバルジは上方向への転換の可能性を、上昇の後なら下方向への転換の可能性を示します。もう一つの誤りは、指数がまだ上昇している最中に動くことです。トリガー水準を割り込むまでは拡大が続いており、パターンは未完成です。
代表的な使い方(考え方)
完成したバルジで仕掛ける
バルジが完成したら、それまでの値動きと逆方向にポジションを取り、売り買いの向きは価格の移動平均で決めます。一般に Dorsey によるとされる定番の組み合わせは短期の移動平均で、バルジの時点で平均が下向きなら買い、上向きなら売りを示します。
トレンドの建玉の出口を締める
トレンドフォロワーは完成したバルジを新規の仕掛けではなく、トレーリングストップを引き上げたり一部を手仕舞ったりする理由として使います。レンジの急拡大とその後の収縮は、ひと相場の終わり近くに現れやすいからです。
静かなレンジの終わりを待つ
低い値は、レンジが平常に比べて縮み続けていることを意味します。この静かな局面を準備段階とみなし、最初に拡大したバーが陽線か陰線で引けるのを待って、その方向に仕掛けるトレーダーもいます。
ほかの系統のインジケーターとの組み合わせ
マスインデックスは方向を持たないので、自然な相棒はトレンド系のツールです。移動平均線の傾きが最も簡単で、一般に Dorsey の手法とされています。MACD のヒストグラムも同じ役割を果たし、バルジの完成後にモメンタムが本当に転じたかを確認できます。マスインデックスがタイミングを測り、トレンド系ツールが向きを決めます。
他のボラティリティ指標との組み合わせには注意が要ります。ボリンジャーバンドや TTM Squeeze も収縮と拡大に反応するため、マスインデックスに重ねても同じ情報を繰り返すことが多くなります。役立つのは静かな局面です。スクイーズの状態と低いマスインデックスが重なれば、エネルギーを溜めている市場を表し、最初の大きなバーがその放出先を示します。
ATR は、マスインデックスが残す空白を埋めます。典型的なバーが何ポイント動くかを示すので、バルジが行動の理由を与えた後のストップ位置や建玉の大きさを決めるのに必要な情報になります。ADX は先行するトレンドを別の角度から見せ、バルジが終わらせつつあるかもしれない値動きが、逆張りに値するほど強かったかを確かめられます。
AlphaPrimeでの扱い
AlphaPrime では、マスインデックスは「マスインデックス Mass Index」というグループ名でビルディングブロックのカタログに並び、ストラテジージェネレーターが使うボラティリティ系統のひとつです。調整できる入力は、合計期間にあたる指標期間と、二本のレンジ平均の長さを決めるレンジEMA期間です。バルジ系の条件にはさらにバルジ水準があり、バーごとの値で表すため、期間を変えても同じバルジの意味が保たれます。もう一つのバルジの戻り幅は、パターンを完成させるために指数がどれだけ戻ればよいかを決めます。
条件の種類は、バルジの考え方と方向を持たないという性質に沿っています。マスインデックスの反転バルジ(買い)とマスインデックスの反転バルジ(売り)は、完成したバルジをそれぞれ買い側と売り側で示します。マスインデックスのバルジ形成中とマスインデックスのバルジ天井はパターンができていく過程を追い、二連続の反転バルジとバルジ反転後に反転バーの高値を上抜けて引けは確認を加えます。マスインデックス圧縮は静かな局面を扱い、圧縮解除で終値上昇とレンジ拡大の陽線は最初の大きなバーを捉え、この二つにはそれぞれ下向きの版もあります。指数そのものに上昇や下降を求めることもできます。
ジェネレーターはこれらをエントリー、エグジット、フィルターのルールとして使い、トレンド、モメンタム、時間帯の系統と掛け合わせます。候補は GPU で並列にバックテストされ、バルジのルールが一度も見ていないデータで満たすべきアウトオブサンプル検証の基準を自分で設定できます。通過した組み合わせは取引プラットフォーム向けのストラテジーコードとして書き出せ、シミュレーションで検証を続けられます。
よくある質問
マスインデックスのバルジは買いと売りのどっち?
バルジ単独ではどちらでもありません。バルジはレンジの拡大がピークを越えて落ち着いたことを示し、転換点の近くで起きやすいものの、方向は持ちません。向きはバルジ前のトレンドか、移動平均線などのツールから判断します。平均が下向きなら上方向への転換の可能性、上向きなら下方向への転換の可能性を示します。
マスインデックスのパラメーター設定はどうする?
どの銘柄にも通用する答えはありません。レンジEMA期間と指標期間を短くすると指数は速く反応しますがノイズも増え、長くすると持続的な拡大にしか反応しません。しきい値は期間に依存するので、期間を変えたらバルジ水準も合わせて見直し、異なる時期でも振る舞いが保たれるかを確かめてください。
マスインデックスの反転バルジは当てになる?
予測ではなく、タイミングの手がかりとして扱うものです。多くの銘柄は標準的な高いしきい値にめったに届かず、レンジ相場ではひっくり返すべきトレンドがないままバルジが出ることもあります。はっきりした値動きの後で、方向にはトレンド系ツール、ストップ幅には ATR を組み合わせ、まずお手持ちの銘柄で検証してから使うのが向いています。

